贈りもののマナー

−水引とは何か?結び方は?       
●結婚祝いや弔事では蝶結びは使わない       
  包んだ紙が開かないように結ぶのが水引です。これはかつて中国からの渡来品の箱が紅白の麻糸でくくられていたのが変化したものと言われ,このため一般慶事には紅白,結婚や長寿のようなお祝いごとには豪華でおめでたい金銀を用いることもあります。反対に,弔事には黒白か銀一色のものを使うのが一般的。ただし,神式には白のみ,また法事などの先祖祀りには黄白を使う地方もかなりあるようです。
   水引の数は,一般には五本。大きな品や大事な贈り物には七本,九本などと奇数で増やしていきます。しかし,最近では既製の水引は五本がほとんどで,結婚祝いの場合は二筋合わせて十本にすることが多いようです。
   結び方は,しっかりと固く結ぶ本結びが「結び切り」と呼ばれているもの。一般の贈り物には両方に輪をつくる「蝶結び」,さらに一方だけ輪をつくる「片輪結び」もあります。これは端を引くとすぐほどけるので,ちょっとした贈答品に使う略結びとされています。うまく結ぶコツは,水引をしごくこと。とくに結び目になる部分は,よくしごいておくと結びやすいでしょう。
  最近では,地方によって結び方の習慣が違うことも心得ておきましょう。二度とあってはならない結婚祝いや弔事には本結び,何度あってもいい贈り物には蝶結びにするのが関東を中心とする傾向。関西では一般の贈り物でもていねいにしたいときは結び切りを使います。

−のしとは何か? なぜ必要か?       
●生もの以外の贈りものに貼るのがしきたり       
  贈り物を紙で包んで水引をかければ,これで体裁が整ったというわけではありません。次に必要なのは,のしを貼るということです。
  のしは,日本の贈答の特徴ともいえるもの。もともとはあわび貝を薄くのして干したもので,生ものの象徴でした。これを包装の上から右肩に貼ることで「生ものを添えました」という意味になります。これも贈りものを紙で包むことと同様,贈りものが神仏への供え物という思想に原点があるようです。
  ですから,生もの以外の贈りもの,例えば反物や陶器,装飾品などの贈りものにはのしを貼るのがしきたり。反対に,鰹節や鮮魚などの生鮮品には,贈りもの自体が生ものなのでのしは不要です。当然,生ものを供えてはいけない仏前への供物にものしは不要です。
  こういった習慣も,現在ではずいぶん誤りがあります。古いしきたりにこだわるというよりも正しい知識として知っておくと,年配の方などに贈りものをするときや大切な贈答品を贈るときなどに便利です。とくにギフト店の方たちには気をつけていただきたいポイントです。

−のし紙とは?どういったときに使うのか?       
●あくまで略式の贈答体裁であることを忘れずに       
  水引とのしを印刷した紙のことをのし紙と言います。実際には水引やのしをつけていなくても,のし紙を品物にかけることで,紙で包んだつもり,のしをつけたつもりになって「改まった気持ちでお贈りします」という意思表示をします。店やデパートで買う贈答品はこののし紙をかける場合がほとんど。というのも,のし紙は包む手間と時間を省くための略式の贈答体裁だからです。大切な贈りものや意味のある品を贈る場合には,のし紙では失礼になることもあるので注意しましょう。
  のし紙は慶事用や弔事用など印刷されている水引の色や種類によってさまざまです。弔事用だけでなく慶事用にものしを印刷していないものがありますので,贈る目的,品によって使い分ける必要があります。
   使い分けは,一般慶事や手みやげ,季節の贈答には紅白五本の蝶結びを。紅白五本の結び切りは,病気や災害見舞い,快気祝いなどですが,病気見舞いに蝶結びを使う地域もあるようです。また,紅白十本の結び切りは結婚に関する贈答に使います。弔事の贈答には黒白,法事などには黄白,神式の弔事や法事にはグレーを用います。