葬儀・告別式

−会葬のマナーと心得は?
●遅刻や中座を慎む
   葬儀に参列するには式が開始される十分前までには受付をすませるくらいの段取りで出掛けたいものです。もし遅れてしまったら,席が定められていないときは末席に着くのがマナーです。遺族や世話役などにすすめられたときは,遠慮しないで定席に着きます。
   告別式だけに参列する場合は,告別式が行われる時間内に到着すればよいでしょう。
   式が始まったら,静かに式の進行を見守って,私語を慎みましょう。中座をすることは極力控えたいものですが,どうしても席を立たなければならない場合は,あらかじめ末席にすわり,退場する時刻になったら,そっと退場します。喪主や遺族にあいさつする必要はありません。受付に小さく声をかけるだけにします。
●受付では簡単にあいさつ,記帳して香典を差し出す
   受付では,「この度はご愁傷さまでございます」などと,簡潔にお悔やみの言葉を述べ,記帳して,香典を差し出します。あまりだらだらとあいさつするのは,あとに続く人に迷惑がかかります。友人や知人が受付にいる場合もよけいなおしゃべりは慎みます。
   通夜で香典を供えている場合は,記帳だけしますが,そのことについて受付に断りを言う必要はありません。
●芳名帳には住所・氏名をきっちりと書く
   芳名帳は,のちほど会葬御礼などを送る場合にこの名簿に基づいて行いますから,住所や氏名を略さず,読みやすい,くずさない文字で記入します。
●お悔やみの言葉は宗派の用語に気をつける
   弔意を表すときや弔辞には,宗派の用語に気をつけたいものです。例えば仏式では「浮かばれない」「迷う」などの言葉は避けます。「冥福」「成仏」「供養」などは仏式の用語で,神式やキリスト教では使いません。
   キリスト教では死は悲しみではなく,「神のもとに召される」のですから,信者でない場合は,「私もお祈りさせてください」ぐらいにとどめておきます。
●会場では大声で話さない
   会場に入ったら,係に案内された席に着きます。とくに案内のない場合には,前のほうから順にすわります。会場では,友人や知人に出会った場合も会釈する程度で,話が必要な場合は,小声で簡潔にすませます。大声で話したり,遺族や故人のうわさ話などをすることは慎みましょう。開式の前に遺族に出会ったら,お悔やみの言葉を簡潔に述べる程度にします。わざわざ遺族を捜してお悔やみのあいさつをするのは非礼になります。式場で目が合ったり,すれ違った場合も軽く会釈する程度で,ていねいなあいさつは必要ありません。

−代理で会葬する場合は?
●芳名帳に依頼者の住所,氏名を記入する
   受付で,誰の代理であるかを小声で告げ,芳名帳には依頼者の住所,氏名を記入し,その脇に「代」と小さく書き添えておきます。代理人である自分の氏名などは記入する必要はありません。
   依頼した人の名刺を預っているなら,「代」と記入した自分の名刺を添えて差し出します。手渡す香典には,代理の旨を断らなくてもかまいません。

−会社,団体の場合の会葬は?
●社名,役職名から記帳する
   会社や団体の一員として会葬した場合は,社名や団体名,役職名なども記入します。よく署名しないで名刺を差し出す人もいますが,芳名帳は,遺族が保存するものですから,きちんと記入することです。個人的に会葬したときは,個人の住所と氏名だけを記入します。
   また故人が個人的に関係していた団体や会社の代表であるときは,記帳とともに名刺を添えて立場を明らかにしてもかまいません。名刺には「弔」という文字を添える人がいますが,それは必要ありません。

−慶事と弔事が重なった場合,葬儀が二つ重なった場合は?
●弔事を優先させる
   葬儀・告別式は,万障繰り合わせて出席するほど慶事にも優先することです。結婚披露宴と葬儀・告別式が重なった場合は,告別式に出席するのがしきたりです。
●出席できなかったほうに代理人を立てる
   二つの葬儀が重なった場合は,出席できないほうに代理人を参列させるようにします。葬儀が近親者なら,妻や夫,子どもなどを代理に立てますが,仕事関係の場合には,会社関係者を参列させます。
   勤務先の部下の葬儀なら,自分の部下で故人の上司か同僚に当たる人を代理人にするとよいでしょう。香典は代理人に持参させてかまいません。
   いずれの場合も,葬儀に出席しなければならないほどの間柄だったのですから,代理を立てた喪家へは,初七日などに弔問し,霊前にお参りするようにします。

−無宗教の葬儀の場合は?
●ほかの宗教と同じ姿勢で出席する
   無宗教の葬儀には,宗教色のある葬儀とは異なって,特定の形式や式次第はありません。従って音楽葬や演劇葬などというように自由なかたちの式が演出されます。仏式の焼香のような一人一人の告別のしかたとしては,キリスト教式で行う献花のかたちが多いようです。
   列席する会葬者は,とまどうこともあるようですが,ほかの葬儀と同じ姿勢で参列すればよいでしょう。
   席は,係員が案内した場所に着席し,案内のない場合は,前から順に詰めて座ります。数珠の持参は控え,香典は「御霊前」でかまいません。

−告別式のあとは,辞去してもいい?
●出棺はできれば見送りたいもの
   告別式が終われば辞去してもいいのですが,遺族のあいさつもありますから,できれば出棺を見送るようにしたいものです。
   焼香のあと,預けたコート類を受け取り,式場の隅や外で出棺を待ちます。ごく寒い季節や雨の場合,コートを着てもかまいません。出棺の際は,頭をていねいに下げて霊柩車を見送ります。

−火葬場まで同行を希望してもいい?
●遺族に頼まれたらできるだけ同行する
   喪主や遺族,近親者のほかに,故人と親しかった友人や知人などは,火葬場へ同行するようにします。また同行を遺族から頼まれたら,できるだけ同行します。どうしても同行する時間がない場合は,ていねいにお詫びして断るのがマナーです。
●同行を希望する場合は早めに遺族や世話役に連絡を
   遺族からの依頼がなくても,同行を希望する人は,同行できます。ただし世話役や遺族には,火葬場までの車の段取りがありますから,早めに連絡をして承諾を得ておきます。また車に空席がある場合は,事前に申し出ていなくても同行してかまいません。

外国人の葬儀に参列するときの注意点は?
   外国人の葬儀は,同じキリスト教式であっても少し異なります。日本でのキリスト教式の葬儀は,日本的な習慣などが加味されていますので,日本と同じ葬儀の要領と思っていると,とまどうかも知れません。しきたりになっていることをもう一度チェックしたほうがよいでしょう。
   外国人の葬儀は,よほどの有名人でないかぎり仰々しく行うことはなく,故人とごく親しい人が集まって葬送するものです。また,献花なども行われません。
   とくにカソリックでは,教会に供花をしても拒否されますので注意しましょう。お花は自宅へ贈ったほうがよいでしょう。また香典も日本の習慣ですから,現金を香典のつもりでおくるのはタブーです。