祝事のマナー

−帯祝い(着帯祝い)ってなに,どのようにするの?
●無事に子供が生まれるようにと願いをこめて
   安産と子供が丈夫に育つことを祈願し,妊婦が腹帯を巻く習慣を帯祝いと言います。この習慣は,おなかの子供の位置を安定させ,必要以上に大きくなるのを防ぐ効果もあったようです。多くの場合,妊娠五か月目の戌の日に行われますが,七か月目や九か月目に行う地方もあるようです。戌の日に行われるのは,お産が軽く,多産な犬にあやかっての習慣と言われています。帯祝いには,かつては親類縁者に妊娠を知らせる意味もありました。
   しきたりとしては,嫁の実家や仲人から紅白の絹地やさらしに安産のお守りを添えて贈られ,婚家で着帯が行われていました。ただし,こういった儀式は,家制度のあった過去のものです。現在では,子供は家ではなく直接の父と母の責任において育てるものなので,儀式にのっとるよりも父母の考え方に基づいて行れるべきでしょう。
   また,腹帯はおなかを冷やさず安定させることを考えて,生活状況や好みで選ぶのが合理的。さらし帯だけでなく,専用のガードルやコルセット式のものなど,着帯しやすいものがいろいろ出ているので病院や助産婦さんに指導を受けて決めればいいでしょう。
   現代では,祝い方にもとくに格式ばった決まりはありません。せいぜい双方の親を招待して,お赤飯などで祝うのが一般的ですが,夫婦二人だけで祝い膳を囲んで喜びを分かち合うのもひとつの方法です。招かれたときは,実用的なマタニティウェアや祝い肴,ケーキなどを。出産時には出費もかさむので,現金でのお祝いも喜ばれるでしょう。
   とくにお返しは不要ですが,内祝いとして「帯内祝」もしくは「着帯内祝」と表書きしたお赤飯や祝い肴などを配ります。

地方別・帯祝いの風習
   帯祝いの習慣もさまざまで,地方によっては白木台に,さらし,のし,友白髪(麻のひも),肴,赤飯(あるいは祝金包)など五品を揃えた「帯祝いセット」が売られているところもあります。
 石川県では「コロコロだんご」という餅を妻の実家でつき婚家や親戚に贈るならわしがあります。同じ北陸でも富山県では「コロコロだご」という呼び名で,こちらは妊婦が臨月に実家へ帰るときにこの餅を持って帰るようです。
   愛知県の尾張地方では,十六週あるいは二十四週以降の戌の日に,妻の実家から婚家へ腹帯と一緒に赤飯を贈
ります。福岡市では身内だけの祝宴を催し,そのあと重箱に詰めた赤飯にナンテンの葉と塩の包みを添えて親戚に
配る習慣も残っています。

−妊娠の知らせを受けたら?
●お祝いの気持ちがいちばんの贈りもの
  生まれてくる子供の祖父母にあたる場合,帯祝いのときに紅白のさらしか絹地の反物に安産のお守りを添えて贈るのがしきたりです。しかし,現代の若い夫婦にはもっと実質的なもののほうが喜ばれるでしょう。たとえば,マタニティウェアやそれに代わるギフトカード,祝いの席に招かれたときには好物の食べものや酒肴など。何がいちばん良いかは,希望を聞いてから諸状況に合わせて対処するに限ります。
   仲人の場合,結婚式当日だけの頼まれ仲人や,たまたま紹介の労をとった関係なら,通知があったら「おめでとう」と言葉のお祝いを。ただし,もともと親しい間柄だったり,仲人を受けたことで家族ぐるみの交際に発展した仲なら,喜びを祝ってあげたいものです。おすすめの育児書や親の心構えに役立ちそうな本,栄養価の高い食品やマタニティ用品を贈るのが一般的でしょう。
   また,友だちや知人も妊婦に栄養をつける意味でフルーツや,便利なマタニティ用品などがいいのではないでしょうか。現金などのお祝いは少しおおげさな感じであり,形式的すぎます。負担にならない程度のものを選び,本格的なお祝いは出産までとっておきましょう。

−出産の通知はいつごろ,だれに?出生届けはいつまでに?
●親しい人にはすぐに,そのほかは折りを見て知らせを
  無事に出産を迎え,待望のわが子が誕生したら,新たに父と母になった夫婦は,親しい人たちに出産を知らせます。通知するのは自分たちの親や兄弟姉妹などのごく親しい人,身近な友だちとご近所などでお世話になっている家があれば,その範囲までで十分です。すぐに知らせるのが大切なので,口頭や電話で連絡します。
   仲人や親類を含めて,それ以上の関係者には母子ともに元気に退院したあとに追って知らせればいいでしょう。また,会社の上司や普段あまりつき合いのない友人・知人などへは,季節のあいさつの折りにふれる程度にとどめるのが常識です。遠方の人たちには,年賀状や暑中見舞いなどを利用して簡単に知らせればいいでしょう。
   ちなみに,出生届は出生地・本籍地・または現住所のいずれかの市区町村の各役所へ,子供が生まれてからは二週間以内に届けるのが原則です。届け出に必要なものは,病院や産院から渡された出生証明書と母子健康手帳,認め印。出生後二週間目が日曜日か休日のときには,その翌日が届け出の最後の受付日です。これを過ぎた場合でも受付は可能ですが,正当な理由がない限り,過料を徴収されることになるのでご注意を。